オムニチャネルの時代⑧ サービス業へのイノベーション

ネットショップが生き残るためにはメーカーになるかサービス業になる必要があります。
サービス業に業態転換をして成果を挙げた事例をご紹介します。


エンジェル宅配

http://www.angelexpress.jp/

エンジェル宅配は、ネットで引き出物を販売しています。
しかし、いくつかの特徴があります。

一つは、商品を新郎新婦や披露宴会場にお届けするのではなく、披露宴出席者のお宅に直送することです。
出席者は手ぶらで帰れるため、披露宴の2次会や帰り道がとても快適になります。

遠方からのゲストや、雨が降って傘を持たなければならないとき、2次会会場が遠い、お子様連れの方などにはとても嬉しい配慮です。
また、引き出物を直送するということは、持ち込み料がかからないということでもあり、実質的にコスト削減になります。
こちらは新郎新婦にとって嬉しいことです。

二つ目は、同梱サービスをご提供していることです。
エンジェル宅配で購入した引き出物だけでなく、他のお店で購入したものや、手作りのものを同梱することができます。
新婦が作った手作りの品、新郎新婦の実家で作っているお米やお酒、地元の名産品など、なんでも同梱して送ることができます。


サービス誕生のきっかけ

このサービスを開発したアールウェディング 代表の野口さんは、2004年ごろ、ネット通販の成長期にネット通販を始めました。
仕入れ品の引き出物販売からはじめ、当時ネット通販市場が成長期だったこともあり、リスティング広告などで集客し、売り上げは急激に伸びました。
売り上げが大きくなっても、パートさんを含め、数名で効率的に事業を運営していました。

しかし、徐々にネット通販の競争が激化し、同じ商品を売るお店が増え、価格競争が激しくなり、リスティング広告の費用もどんどん高額になってきました。
利益が少なくなる中で、売り上げを増やすことで、利益を維持しようと頑張っていました。
仕事が深夜にまで及ぶことも多くなりました。
価格競争の激化に対し、何か手を打たなければ数年後は、会社が危険な状況になると真剣に考える日々だったそうです。そこで、野口さんは価格競争から抜け出すための方法を求めて、当社にご相談にお越しになりました。

ヒアリングと分析を重ね、当時から行っていた引き出物直送サービスに成長の見込みがあると判断しました。
認知度は低いサービスですが、披露宴を開催する多くの方にとってメリットがあるサービスです。
新たな競争に参入するのではなく、認知度は低いが多くの人にとって価値のあるサービスを世に広めて市場を作ることを考えました。
すぐに儲かるものではありませんが、長い目で見て、確実にこれから成長するサービスです。
そこで、直送サービスだけをご紹介するサイトを単独で作り、また特徴が伝わるようなコンテンツと、さらには受け取った方が喜ぶように段ボールや同梱物に工夫を凝らしました。

しかし、この直送サービスは、エンジェル宅配さん以外の引き出物通販会社さんでも行っています。
ネット通販をしている会社であれば、どこでも可能なサービスだからです。
数年すれば、同じく直送サービスに力を入れてくる会社はたくさんあるだろうと予想していました。

そこで、もっと長く優位性を築けるサービスの開発が必要だと考えていました。


お客様の声に耳を済ます

私は野口さんに「直送サービスの利用者が困っていることがありませんか?」と聞きました。
なぜなら、誰もが気付くニーズでは無く、今のポジションに到達しないと気が付かないようなニーズこそが参入障壁の高いサービスだからです。

最初はなかなか特徴的なニーズは発見できませんでしたが、ミーティングを繰り返すうちに、野口さんからアイデアが出てきました。

「引き出物と一緒に何かを送って欲しい、という相談が増えてきています」

たとえば、新郎新婦の地元のお米やお酒、新郎新婦が手作りで焼いた陶芸品を引き出物の代わりに、などです。
たしかに、そういうものを贈りたい、というニーズは良くわかります。
また、それを叶えてくれるサービスもなさそうに思います。
野口さんはどう対応されているのか聞いてみました。

「賞味期限が極端に短いものなどで無い限り、対応しています。」

しかし、どんなものが送られてくるかもわかりませんし、万一のことがあった場合の対応も考えると、とても手間がかかるでしょう。
なぜ断らないのでしょうか。

「一生に一度の披露宴で、新婦さん、新郎さんがやりたいことを出来る限り叶えてあげたい。だからこの仕事をしているんです。」

私は驚きました。
売上、利益の減少、深夜までの仕事、それでもお客様のこのような我がまま(失礼)に応えたい、という野口さん。
自分が同じ立場だったら、そんなことが出来るだろうか。
これは野口さんの価値観、喜び、理念により実現できているサービスだと感じました。
そこで、提案しました。

「それをメインのサービスにしましょう。」

このような経緯で、同梱サービスが生まれました。
実際に、商売だけを考えると効率の良いものではないと思います。
しかしながら、野口さんにとってはご自身のやりたいことが実現でき、事業も継続でき、そしてお客様が喜んでくださる。
最高のサービスが生まれたのです。