オムニチャネルの時代② 消費者が情報を手に入れた

家電量販店が選ばれる理由

私は家電を購入するとき、池袋のヤマダ電機日本総本店に行きます。
池袋は家電量販店の激戦区で、家電を買うなら、いまや秋葉原よりも池袋の方が安いと言われています。
その中でも最大規模のヤマダ電機日本総本店は、品ぞろえも在庫も多く、価格も安いということで、商品に触れながら買いたいときには最初に訪れたいお店です。

私は写真撮影が趣味で、よくデジカメを買いに行きます。コンパクトも含めると、年に1台くらいは購入しています。
毎年店舗を訪れてショッピングをしていると、お店の対応の変化に気づきます。

量販店で購入するときは、まずはカメラの基本機能、特徴、価格などを比較しながら、時にはお店の方に商品選びのアドバイスをいただき、欲しい商品を決めます。
欲しい商品が決まったら、価格交渉です。
商品選びのアドバイスをいただいたご恩はありますが、それでもやはり少しでも安い方が良いので、ネットと価格比較をします。
スマートフォンで価格.comの価格を調べて、最安値価格と店頭価格に開きがあった時は価格交渉をします。

2008年ごろは、価格.comの最安価格に合わせて欲しいと言っても、
「申し訳ありませんが、商品説明の無いネットショップとは価格を合わせると赤字になってしまいます」とお断りされました。
たしかに、一等地に店舗があり、商品説明などの接客サービスもしていただいた上で、価格も最安値では赤字になってしまうのは良くわかります。
理由に納得しながらも、やはり価格.comの最安値のお店で商品を購入してしまいました。
(店員さんやお店が余程気に入ったのであれば、例外もあるでしょう。)

しかし、これが2010年ごろになると、対応が違いました。
「ポイントによる値引きにはなるのですが、合わせます」と言ってくれたのです。
私は年に1回くらいしか家電量販店に行かないので、出来ればポイントでは無く買値を下げてくれると嬉しいのですが、
まあ説明もしてもらっているし、ポイントでも良いか、と思ってヤマダ電機で購入しました。

さらに2013年になると、なんと店頭表示価格に「ネット価格調査済み」と記載されているのです。
ポイントも含めてですが、最初から価格.comの最安値とほぼ同等の価格になっていました。
これには驚きました。
2008年に店員さんがおっしゃっていたように、こんなことをしていたら赤字になってしまうのではないのでしょうか。
そう思っていたら、2013年の9月のヤマダ電機の決算発表でそれが現実となりました。

> 不振ヤマダ電機、今年の正念場をどう脱す?ショック療法、高い授業料...第2の事業に活路へ
> http://biz-journal.jp/2014/01/post_3846.html

> 13年4~9月連結決算は営業損益段階で23億円の赤字(前年同期は213億円の黒字)に転落し、
> 02年4月に連結決算に移行して以来、初の営業赤字となった。


競争のルールが変った

これまで家電量販店が選ばれる理由は「安く購入できる」ことでした。
その中でもヤマダ電機は最安値でシェアを拡大してきました。
それが今はなぜ変わってしまったのでしょうか。

別にヤマダ電機が値上げをしたわけではありません。
ネットショップの価格競争は激しくなっていますが、これもこの2~3年の話ではありません。
以前からネット上の価格は家電量販店より安いのです。
この2~3年で何が変ってしまったのか。
それは消費者が情報を手に入れてしまった、ということです。

もともと、ネットが無い時代から、ヤマダ電機が最安値だったわけではありません。
商品によって、安いものもあれば、そうでないものもありました。
しかし、消費者にはそれを調べる方法がありませんでした。
つまり、価格競争を活性化させるための情報を手に入れることが出来なかったのです。

しかし、ネットの普及により、家電量販店よりもネットの方が価格が安いことは知られるようになりました。
そのため、欲しいものが決まっている方はネットで価格を調べて、最安値のショップで購入するという消費行動をとるようになりました。
そこで活躍したのが価格.comなどの価格比較サイトです。
しかしながら、実店舗で商品を見て、どれを購入するかを決定する場合、事前にネットで価格比較をしておくことは難しいです。
候補として検討しているたくさんの商品の価格を事前調査しなくてはならないからです。
そのため、ネットが普及してからも、実は店舗で検討しているシーンでは価格競争が行われていませんでした。

それがこの2~3年の通信環境の改善、スマートフォンの爆発的な普及によって、状況が変わりました。
消費者が店舗で価格比較をしながら商品をどこで購入するかを決定することが当たり前になったのです。
このように、通信環境の変化、スマホなどのモバイルデバイスの普及、進化が、ブロードバンドが普及したときのように、大きく消費者の行動を変化させているのです。
競争のルールが全く変ってしまう、そんな衝撃的な環境変化が起こっているのです。

この消費行動変化は家電量販店だけの話ではありません。
不動産屋はかつては駅前にあることが選ばれる理由でした。
消費者は物件情報を探すときにまずは不動産屋を探すからです。
駅前にあって、最初に選んでもらうことが優位性でした。

しかし最近では、消費者は最初に不動産屋に足を運びません。
まずはネットで情報を探します。
そして、気に入った物件を探し、その物件を扱っている不動産屋に連絡をするのです。
つまり、立地よりも選ばれる物件を提示することが優位性につながります。
オリジナルの物件情報を持つか、もしくはそれをより分かりやすく伝えるネット上のアクセス対策、サイトの使いやすさが重要になります。
つまり、不動産屋の立地は選ばれる理由としてはほとんど意味がなくなってしまいました。