戦略の前提を疑え

*この記事はism2015アドベントカレンダー参加記事です。
http://www.adventar.org/calendars/1187

戦略という言葉の乱用

ismでは戦略の重要性を伝えています。
一般的に、企業が戦略と言う言葉を単独で使う場合、経営戦略もしくは事業戦略、つまり、全体の枠組みを意味します。
全体を考えたときに、限られた資源をどこにどのくらい配分するか、というのが戦略です。
全部は出来ない、だからどこに絞り込むか、ということです。

しかし、マーケティング戦略やウェブ戦略という言葉があるように、限られた範囲において戦略という言葉を使うこともあります。
この場合、「マーケティングという範囲に限って考えたときに」マーケティングの予算や人をどこにどのくらい配分するか、と言う意味です。
やはり、全部は出来ない、だからどこに絞り込むか、ということです。
「それは戦略ではなく、戦術ではないか」、という話は昔からいたるところであるのですが(笑)、部分的な戦略という考え方も否定はしません。
ただ、経営戦略、事業戦略とウェブ戦略レベルの話を同じように語ってしまうと、経営の優先順位を間違えますから、正しく言葉を使いたいものです。
いずれにしても、戦略がベースとなって、その上で戦術が設計されますから、前提としての戦略が良くないと、そのあとにどんなに頑張ってマーケティングをしても成果が出にくいことは想像できるでしょう。

戦略の前提

たとえば、ウェブ戦略を考える上で、あるネットショップのマーケティング担当者が、「集客に集中しよう。コストがかからないSEOならリスクも少ない。ブログをたくさん書こう。」と考え、ブログを書くことに集中して時間をかけたとします。
しかし、成果は出ないでしょう。
なぜなら

  • (狭義の)SEOは効果が無い
  • 集客が出来ても、正しい見込み客を誘導できているかどうかわからない
  • 正しい見込み客を誘導しても、コンテンツやサイトの出来が悪いと、成果につながらない

などの理由があるからです。

しかし、いまお伝えしたいのは、この戦略を立てたマーケティング担当者は、なぜ「集客」「SEO」「ブログ」という着想を得たのか、ということです。
それは、彼が常日頃接しているメディア、人からそういった思い込みを得ていたからです。

誤った情報が誤った戦略を生む

テレビ番組やブログなどでのやらせ事件が話題になっています。
最近では、ネイティブ広告と言われるような、記事なのか、広告なのかがわかりづらい手法もメディアとしての信頼性を損なうと批判されています。
しかし、ネットメディアなど、無料でコンテンツを提供する立場の方から見たら、生きていくためには広告出稿をしてもらわなければならず、広告出稿してもらうためには、他の広告以上の掲載メリットが必要です。
広告主にとって価値をもたらす必要があるのです。
メディアのユーザーと、広告主のどちらをみて仕事をするでしょうか。もちろん、広告主でしょう。
つまり、無料で得られる情報は嘘が多いということです。

これは企業が提供するブログ記事やセミナーの情報も同じです。
自社への利益誘導を目的として情報発信しているのが普通です。
モバイルマーケティング、オムニチャネル、越境ECなど、鵜のみにしていませんか。
SEO=リンクビルドと誤解させたり、SEM=リスティング広告と誤解させる人たちがいるように、用語は正しくても、間違った意味を伝えていることも多いのです。
あなたにそれを伝える人は、それによって利益を得る立場にいるひとではないでしょうか。
展示会のセミナーは出展社向けに宣伝枠として販売されているのが普通です。
しかし、それを見て、「これだけ多くの人の前で話をする専門家が言うことだから、真実に違いない」と思ってしまっていませんか。

このような、偽の情報をもとに、戦略を立ててしまうと失敗します。
つまり、正しい情報を入手できていること、それが戦略の大前提なのです。

正しい情報を得る

あなたはどこから情報を得て、経営判断をしていますか。
テレビを見て、新聞、雑誌を見て、ネットの話題を見て、それを前提に社会を想像していませんか。
それは、メディアをコントロールしたい人たちが見せている幻想です。
幻想を前提として戦略を立てると間違いますし、また多くの人と同じ情報しか持っていなければ、戦略も似通って、効果が低いのです。

本当の情報は、正しく原因と結果を判断できる、ごく一部の人しか持っていません。
信頼できる人を見つけること。
それが戦略的経営のための最初のステップです。
信頼できる人が発する信頼できる情報。
何が真実かを見分ける力が求められます。
その力を養うには、歴史を紐解いたり、世界のことなる文化圏の価値観の違いを知ったり、自分たちを取り巻く常識を疑い、自分の価値観を持つことです。

そして、多くの人の持つ認識と、自分自身の認識の違い、それが戦略性につながる、価値ある情報です。
前提としての認識に違いがあるからこそ、戦略にも違いが生まれ、結果に差がつくのです。

いつも同じ価値観の仲間と過ごしてばかりいませんか。
異業種の集まりや、立場が違う人の集まりに参加していますか。議論していますか。
無料のニュースばかりでなく、プライドを持った、有識者の情報をお金を払って買う習慣がありますか。
経営の方向付けを変えたい方は、来年はこれまでと違った、新しい人たちと出会い、視点を変えることをお勧めします。